開発陣の中で激論が交わされた
新型クラウンには4つの車型、「クロスオーバー、スポーツ、セダン、エステート」が用意された。
開発陣がまず手がけたのはクロスオーバーで、これを豊田章男社長に見せたところ「セダンも作りなさい」という指示があったという。そして、それを“拡大解釈”した開発陣はセダンに加えスポーツとエステートも作ってしまった、というのが4車型が誕生した理由とのことだ。
単純に言ってしまうと以上のような経緯だそうだが、その背景にはクラウンを再びトヨタブランドを牽引するフラッグシップとして輝かせたいという並々ならぬ強い思いが、豊田社長にも開発陣にもあったことは間違いない。そうでなければこれほど思い切ったことはできなかっただろう。
そもそもクラウンは1955年の登場以来、「革新と挑戦」というDNAを持ち続けている。そして「これからの時代のクラウンらしさ」を追求した結果、4つの新しい車型が生まれたということだ。
このような経緯だった関係上、開発スケジュールは4車型でタイムラグがあり、まず売れ筋と思われるクロスオーバーが登場し、その後、1年半の間に3つのモデルが順次、投入されることになる。

クラウン クロスオーバーのトランクルーム。電動パワー式としたため、トランクリッドを支える左右のステイが太くなった。
さて、このクロスオーバーだが実はゴルフバッグ(9.5インチ)は3つしかトランクルームに収まらない。クラウンはこれまでスペースをとってしまうパワー式トランクリッドを敢えて採用せずステイを細くすることで、ゴルフバッグを4つ搭載できるようにしてきた。

カタログに掲載されていたゴルフバッグ(9.5インチ)を3つ搭載したところ。なお、トランク容量は450Lとかなり広い。
これまでのクラウンユーザーが実際のところ4つ搭載することがどれだけあったかはわからないが、購入契約の印鑑を押す前にはたびたび「ゴルフバッグはいくつ積めるの?」と聞かれるというのがセールス現場の声だ。そして「4つ積めます」と答えると顧客は満足げに印鑑を押すそうだ。
これは昭和から平成のクラウン像なのかも知れないが、新型ではハンズフリーのパワー式トランクリッドを採用してゴルフバッグは3つ搭載という選択をした。開発陣は“やはりそこには激論があった”と明かしてくれた。
実際のところ、ユーザーの満足度はトータルに考えてパワー式トランクリッドを採用した方が高いだろう。それは以前からわかってはいたが、クラウンという長い歴史を刻んでいるクルマには4つのゴルフバッグを積めなくてはならないという呪縛があった。
それが解き放たれたのは4車型が誕生し、しかも後輪駆動ではなく前輪駆動ベースで後輪はモーターで動かす4WD、さらに日本国内専用車ではなく世界40カ国・地域で販売するグローバルカーになったという大変革があればこそ、と言えそうだ。
それほどにクラウンにとってゴルフバッグが4つ積めるか積めないかは大きな問題だった。しかし、ここで確認しておきたいのはゴルファーズカーとして見た場合でも、新型クラウンは明らかに進化してユーザーフレンドリーになったということだ。これからもゴルファーズカーの王者として君臨することになりそうだ。
●クラウン クロスオーバー 車両価格
G 475万円
G“Advanced Leather Package” 570万円
G“Advanced” 510万円
G“Leather Package” 540万円
X 435万円
RS 605万円
RS“Advanced” 640万円