夢の舞台「オーガスタナショナルゴルフクラブ」の設計にも携わった球聖ボビー・ジョーンズの言葉を紹介する。
1930年、ジョーンズは全英アマに勝ち、全英・全米オープンも制し、グランドスラマーになるための残りは全米アマだけになった時、記者から「引退したら何をするんだね?」と訊かれた時の応答が表題の「言葉」ただし正確にいうと、これはジョーンズがいったのではない。その時のシュチエーションはこうなる。

記者が訊いた時、ジョーンズはコーンウイスキーを親友で伝記作家でもあるO・B・キーラーと一緒に飲んでいた。ジョーンズは記者の質問に、自分の代わりにキーラーに答えるよう促した。するとキーラーは英国の詩人、イレール・ベロックの詩を吟じたのである。全文を付記しよう。
もし私が豊かになったら、
あるいは歳をとったら、
寒さから私をかくまってくれる
草ぶき屋根を建てよう。
海辺へ歩いていける
深い森に家を持とう。
そして私が少年だったころに
やはり少年だった男たちと
ともに酒を酌み交わしたい。
その詩の最後のフレーズが表題のそれだ。
1930年、ジョーンズは引退すると故郷で実際そうして過ごした。その延長線上にオーガスタ・ナショナルGCの造成がある。

ボビー・ジョーンズ(ロバート・タイヤー・ジョーンズ・ジュニア 1902~1971)
世界中のゴルフ愛好者からいまなお「球聖」として尊敬される。1930年、アマチュアのまま全米オープン、全米プロ、全英オープン、全英アマの年間グランドスラムを達成すると、28歳の若さで引退。1934年、オーガスタ・ナショナルGCを設立。マスターズを開催。学業でも天賦の才を発揮。ハーバード大学で文学、エモリー大学で法律、アトランタ工科大学では機械工学の学位を取得した。不世出のゴルファー。
古川正則(ゴルフダイジェスト社特別編集委員)