中島 啓太 2000年6月24日、埼玉生まれ。
15年、15歳(中学3年生)で日本アマに出場し金谷拓実に敗れ2位。
代々木高校入学後数々の国際大会で活躍、日本体育大学進学後、20年世界アマチュアランク1位に。
21年7月に日本アマで念願の初優勝、9月にパナソニックオープンでアマ優勝、11月にアジアパシフィックアマで優勝しマスターズの出場権を得る。
「世界の方から応援されるような選手になりたいです」
“覚悟”のアジアアマ。「勝つしかない試合だった」
2021年11月に開催された「アジアパシフィックアマチュア選手権」の最終日最終ホール、中島啓太はティーショットを右に曲げ、クロスバンカーに入れた。しかし、池越えの難しいショットをグリーンオンしてパーとし、プレーオフに持ち込んだ。そして、同じ18番でおこなわれたプレーオフ1ホール目でまた同じバンカーに入れるも、今度もパーセーブ。
「あのバンカーショットは確信があったとか迷いなくというよりは、勝つしかなかったので、それしか考えてなかった。いいショットを打つとか悪いショットが出るかもという思考はなくて、ただもうやるだけ。あれは相当覚悟が決まっていたかなと思います。最終日の朝はかなり集中できていた。僕がいいプレーをしたら、ほかの選手は意識するだろうから、勝てるという自信もありました」
相手のタイチ・コー(香港)がプレーオフ2ホール目のセカンドショットを池に入れたのも、世界アマチュアランク1位の中島の醸し出す迫力や覚悟のオーラに押されたからかもしれない。
中島は、5メートルのウィニングパットをねじ込んで珍しく雄叫びを上げた。
「何より負けてはいけない試合だったと思うんです。今思うとあのバンカーショットはすごく難しかったと思うし、でも最後にバーディパットを入れられたのはいい終わり方だったと思います」

綿密な準備と集中で、アジア・パシフィックアマのタイトルを「有言実行」で勝ち取った。スピーチやインタビューもしっかり準備して英語でこなす。「こういうことを聞かれるからこういう返しをしようと、毎日夜に予習していました」
準備と集中――中島がつねに取り組んでいる課題だ。
「昨年はパナソニックオープンでも優勝できましたが、あの試合でもアジアアマのために全ホールドライバーを持つことをしたり、すべてアジアアマのために準備してきたことが、成功につながったと思います」
そんな中島は今、4月のマスターズに向けて、全集中で準備している。今までのマスターズは、中島にとって“見て楽しむ”試合だった。
「すごく印象に残っているのは、アダム・スコット選手が優勝した13年の試合。18番で長いパットを入れてのガッツポーズも覚えている。アダムさんがすごく好きだったし、オーストラリア人初の優勝という快挙を成し遂げたのはカッコよくて憧れを持ちました。あとは、金谷(拓実)さんが初出場した19年。出だしの連続バーディに『この人ヤバイ』と思ってすぐ寝ました(笑)。
そして、松山(英樹)さんが優勝した昨年は、僕自身は東建ホームメイトカップに出場していた週ですが、朝早く起きて見ていました。もちろんすごく感動しましたよ。それに、松山さんが最終日の18番ティーイングエリアで目をつぶってブツブツ言っていたので、何を考えていたのかなって気になっていました。とにかく昨年までは自分が出るという視点で見ていなかったんです」
今年“自分がプレーする”という視点で考えると、マスターズはまったく違う試合に映るという。
「コースは難しいなと思いますし、技術だけではなく、本当に心技体そろって100%で臨まないと全部跳ね返されそうな感覚です」
だからこそ、すべてを準備する。
「トレーニングをしっかりして、栄養にも気をつけて、メンタル的にもしっかり準備して。スウィングも(ガレス・)ジョーンズさんとトレーナーさんと相談して改造している感じ。すべてに取り組んでいます」
2月はトラックマンやデータと向き合いしっかり体とスウィングをつくった。それが固まってきた3月はコースに出て球筋をしっかり見極め、試合を意識してラウンドしている。
「実際に、松山さんやタイガー・ウッズのマスターズの動画を見て、コース攻略をイメージしながらプレーしています。自分がプレーするうえで好きと言えるホールはない。見てコース攻略が楽しいのは、13番や16番ですけど、あそこでプレーすると想像したら少しまだ怖いです(笑)」

「オーガスタはフェアウェイの起伏も激しく様々なアングルからアイアンを打たないといけないし、グリーン周りも傾斜が強いなかでグリーンにボールを止める必要がある。グリーン上にも大きなスロープがありライン読みも大切。やらなければいけないことがたくさんあります」